戦争とはなにか。 これ以上の方法はない、というくらい直接的に感覚で訴えかけてくる絵本です。 田島征三さんの「ぼくは50年間、この絵本をつくるためにここまで歩いてきたんだ」という言葉の通り、 作者渾身の作となったこの作品の内容とは。
「くにのためにたたかえ」とはげまされ、戦争にいった僕。 僕は人間に向かって鉄砲をうち、そして敵の砲弾が命中し、僕のからだはとびちった。 でも僕の心は弟の怒りを見、母さんの悲しみを見ます。 弟が戦争に行って死のうとしている・・・やめろ!
いきなり僕が戦争に行って死んでしまう、という衝撃の内容にもかかわらず、 この絵本は子どもにショックを与えるのではなく、 戦争とはなにか、その悲しみと憎しみとはなにかということを、 絵本という形をとってとてもストレートに教えてくれます。 死んでしまった後の僕の心が、全ての感情が絵となって表現されているのです。 そこには国や民族の違いはありません。時代の違いもありません。 そして年齢の違いもありません。 戦争とは誰のために殺されるのか。何のために死ぬのか。 憎悪と復讐がどれだけむなしいものなのか、全ての人の心につきつけられる絵本なのです。 答えは出ているというのに・・・。 日本・中国・韓国の絵本作家が子どもたちに贈る平和の絵本シリーズの第2期の作品です。 このシリーズを通して、世界中の子どもたちが平和の尊さについて、強い思いを抱くことを願います。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
戦場で砲弾にふきとばされた「ぼく」の体はとびちり、なくなりました。 でも、ぼくの心は弟の怒りを見、母さんの悲しみを見ます。 平和を願い、平和を考える絵本。
「母の友」のバックナンバー2010年1月号の「私のことば体験」という松居直さんの言葉を読みなおしていたら、「『平和』ということばは、祈りでした」という文が目に飛び込んできました。
子どもの本を出版する、子どもたちに本を届けるという気持ちの真髄には平和への祈りがある。日本の児童文学の本格的な始まりは戦後にあります。それを考えてみると、子どもの本の出版=平和への祈り。
出版社は違いますが、童心社の本の中に日・中・韓平和絵本シリーズがあります。童心社の紙芝居についてのお話を伺った時の「紙芝居は平和」という言葉がとても心に残っています。
松居さんの言葉とその言葉が私の中で重なりあい、それぞれの出版社が子どもの本に託した思いというのを考えるきっかけにもなりました。
前置きが長くなりましたが、田島征三さんにも戦争について描かれた本が何冊かあります。
そしてそのどれもが心にまっすぐに平和への祈りの気持ちを伝えてくるような気がします。
この本の中の人間は表情もなく粘土細工の人形のようなのに、心をえぐられるように心に迫ってくるのです。
特に肉体が砲弾により引き裂かれ粉々になる場面はとても正視できませんでした。
同じ頃『さがしています』を読みこの『ぼくのこえがきこえますか?』を読みました。
戦争によって引き裂かれ伝えられなかった幾多の声があったことでしょう。この世の中にいらないものがあるとしたらそれは「戦争」だと思います。 (はなびやさん 40代・ママ 男の子11歳)
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