小さな鞄を手に持って、小さな女の子が歩いて目指す場所は「あそこ」。 「いつになったら たどりつけるのかしら? あそこへ いくのに どれくらい かかるかな?」 女の子が「あそこ」へ思いをはせながら歩く様子を見ながら、 読者はきっと考え始めているはず。 「あそこって一体どこのことだろう?」
いま自分がいる「ここ」ではない「あそこ」。 そういえば、子どもの頃の自分と言えば、まだ見知らぬ「あそこ」への憧れの気持ちでいっぱいだった気がする。 まだ行ったことのない場所、会ったことのない人との出会い、もっと大人になった自分がいる世界・・・。 「どこか」ではなく「あそこ」。 そして、その気持ちは色々な経験や喜びや不安が重なっていきながらも、 本質的には変わっていないのかもしれない、とも。
翻訳をされている詩人の加島祥造さんが語ってくれます。 「人生とはまだ知らない『あそこ』への旅。 遠いのか、近いのか。楽しいのか、こわいのか。 まだ見知らぬ『あそこ』へ、いつか自分も行く・・・と感じる心が大切なのだ」
子どもでも大人でも、少し立ち止まってしまった時。 小さな女の子の心の冒険と一緒に、 自分にとっての「あそこ」をもう一度探しにいってみるのもいいのかもしれません。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
人生とはまだ知らない「あそこ」への旅! アイルランドの実力派作家が描く、普遍的で深いテーマを『求めない』の詩人、加島祥造がひもとく。 小さな女の子が手に鞄を持って歩いていく。 「いつになったら たどりつけるのかしら? あそこへ いくのに どれくらい かかるのかな? あそこへ いったとき あたし、とっても おおきくなっているのかな?」 まだ見知らぬ「あそこ」をめざす女の子の心の冒険!
“There”という一言。
日本人が思う「あそこ」と外国人が思う「There」では微妙に違うかもしれません。
私は、「あそこ」という言葉をさほど深みをもって考えたことはありません。
しかし、この本を読んで、実に感慨深い概念だと再確認しました。
「ここ」ではない「あそこ」は別世界なのです。
遠いのでしょうか?
大人の世界なのでしょうか?
夢がかなうのでしょうか?
怖いところなのでしょうか?
誰もが目指すのでしょうか?
いろいろ考えているうちに、少女は「あそこ」を目指すのは「明日」にしようと決めました。
それほど、深みも距離感も重量感も可能性も…様々なものが詰まっている「あそこ」。
きっと、そこまで考えることもなく多くの人は成長し、いつのまにか大人は「ここ」で手いっぱいになってしまっているのです。
子どもたちが思う、「あそこ」に向かう夢を、一緒に考えたいと思いました。 (ヒラP21さん 50代・パパ )
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