3年生のかんこは、空き地の平たい石に座っていた風助(ふうすけ)さんと知りあった。
お兄ちゃんが拾ってきた子犬と同じようにさびしそうな目をしているので、家に連れてきた。足をくじいているのでかんこの家で暮らすことになったが、風助さんは謎の人だった。いつもあの平たい石に座っていた。石のまわりにヤマトシジミの食草が生えているので、この石は「ヤマトシジミの食卓」だと教えてくれた。大昔、ここには自然がいっぱいあったことや、「明日は、いつだって、かんこの味方だ」という励ましの呪文も教えてくれた。
風助さんが姿を消してしまったある日、かんこは「ヤマトシジミの食卓」で、かおという見知らぬ女の子と友だちになる。しばらくすると、風助さんは再びかんこの家に戻ってきた。それからも風助さんはときどきいなくなり、そしてまた帰ってくることをくり返したが、かんこが4年生になったある日を境に再び現れることがなかった。
かんことかおは風助さんを捜そうと、昔のことを知っている人を訪ねた。すると「ヤマトシジミの食卓」のある空き地は、昔風助さんがすんでいたところであるらしいことが分かった。しかし風助さんが、どういう人なのかは分からなかった。
4年生の最後の月に風助さんの代理人から、風助さんが死んだという知らせが来た。 かんこは風助さんの手紙を読んだ。手紙には、かんことその家族たちと過ごせた時間が、風助さんの人生のなかでいちばん嬉しいことだったと書かれてあった。 春、かんこは風助さんがすきだったチョウいっぱい呼ぼうと、かおといっしょに「ヤマトシジミの食卓」の周りに、チョウたちの食草の種を植えることにした。
息子が学校で借りて来ました。
不思議なタイトルとほのぼのとしたイラストに惹かれて読んでみると、情感のあるお話でした。
かんこは、風助さんという不思議なおじいさんを拾ってきます。おじいさんが空き地の平たい石の上に座っていて足をくじいていたからです。
その日からその不思議なおじいさんは、かんこの家に居ついてしまうのです。
かんこの家では岩手に住む一人暮らしの祖父が亡くなったこともあり、その不思議な老人が祖父に重なったのかもしれませんね。
実家で同居ということが難しい時代、晩年はどうしても一人で暮らすということになってしまいます。
実際、私の母もそうでした。そんなことを重ねて読むと、尚更この老人のことがほおっておけなくなる家族の気持ちがわかる気がします。
この老人がどんな人であったのかは後半わかりますが、かんこの家で楽しく過ごせた時間があってよかったなあと思えました。
ほのぼのとした話の中に、しみじみとした切なさも同時に感じました。 (はなびやさん 40代・ママ 男の子9歳)
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