広島県倉橋島で産する「議院石」という、火をくぐっても存在しうる石。 そんな独特な存在感を持った石に支えられるように、次々と登場するカタリベとしての「物」たち。 両方揃ったちょっと小さめの軍手、中のご飯は焦げてしまっている弁当箱、色鮮やかなワンピース、そして8時15分で止まったままの時計・・・。 彼らは語ります。ヒロシマで体験したあの日、あの瞬間のことを。そして今も探し続けている大切な人、持ち主たちのことを。
カタリベたちに出会い、じっと耳を傾け、それを言葉にしたのはアメリカ生まれの詩人アーサー・ビナード。平和記念資料館に収蔵されている展示物に幾度となく向き合い、その物たちにひそむ物語を通訳者として言葉で伝えたいと思ったというのが始まりなのだそう。 その直接のきっかけとなったのは、日本に来日してから「ピカドン」という言葉を知った時。原子爆弾という言葉と違って「ピカドン」は生活者たちが生み出した言葉。それが彼に新しい視点を与え、核の本質を見通すレンズになったといいます。ウランの核分裂が、暮らしを破壊しつくして、はかりしれない命を奪ったのです。確かに「ピカドン」はその実体験を端的に体感的に表わしている言葉なのかもしれません。
実際にこの作品に登場しているのは、資料館に収蔵されている約2万1千点の中から選んだ14点。 それぞれカタリベとなった物たちのプロフィールとして、巻末に持ち主やその家族の物語が収められています。いかに丁寧に取材をし、カタリベたちと向き合ってきたのかが伝わるページとなっています。
この写真絵本に登場するのは、そうした「物」たちだけです。 怖いことはありません。恐ろしい場面もありません。 静かにその日の事を語るだけです。ずっと一緒にいるはずだった持ち主たちを思っているだけです。 でも、確かに彼らはヒロシマを知っています。 そして、今の時代を生きる私たち日本人をじっとみつめているのです。 私たちは、そこから何を感じとらなくてはいけないのでしょう。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
ヒロシマを知っているものたちが、さがしています―たいせつな人びとを、未来につづく道を。
広島平和記念資料館に収められた約2万1千点もの収蔵品。その中から時計、軍手、弁当箱など 今の私たちにとっても身近なものたちが、「カタリベ」となってヒロシマを語りはじめます。
広島の持ち主を亡くし、被曝したモノ達の声を通して、被曝の恐ろしさが描かれています。
8時15分で止まった時計
レイコちゃんのお弁当箱
マリコちゃんのカバン
トシヒコくんのビー玉
突然の悲劇・・・
途切れた未来・・・
目を覆いたくなるような写真を見せるには、まだちょっと早いけど、戦争の事を伝える初めて本として、私はおすすめしたいと思いました。
10歳の娘とは、この本をきっかけに戦争の事や原発の事などを話したりしました。 (ヨム姫ヨム太郎さん 40代・ママ 女の子10歳、男の子6歳、)
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