舞台はむかしむかしの大昔。山がドドド……と噴火して、その時生まれたのがアンキロサウルスの赤ちゃん。だけどひろーいところに一人ぼっち。とぼとぼ泣きながら歩いていると、出会ったのが……彼の何倍も何十倍も大きな大きなティラノサウルス!!
「ガォーー!ひひひひ、おまえうまそうだな」
大変、アンキロサウルスの赤ちゃん、ピンチです。ところが、ティラノサウルスが飛びかかろうとしたその瞬間。
「おとうさーーん」
アンキロサウルスの赤ちゃんがティラノサウルスの足もとにしがみついたのです。一体これはどういうこと…? 物語はここから急展開。草食恐竜と肉食恐竜の思いもよらない二人のやり取りが始まっていくのです。
迫力の恐竜の姿に緊張感を持ちながら、それでも読者はこのティラノサウルスのことを心底恐いと思うことはできません。なぜなら、否応なしに父性に目覚めていってしまう様子が可笑しくも切なく、親近感すら抱いてしまうから。ひたすら無邪気な心を目の前にすると、例え他人だったとしても、こんなに深い愛情を感じてしまうものなのか。
わかりやすく明解でユニークな絵と、しっかりとしたストーリーがあるからこそ、読み終わった後には子どもは子どもなりに、大人は大人として、それぞれがしっかりとその感想を受け止めることができるのでしょう。それが、シリーズを通して読み続けられている、宮西達也作品の人気の秘密なのかもしれませんね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
アンキロサウルスのあかちゃんのまえに、ティラノサウルスがあらわれて、「ガオー! おまえうまそうだな」とちかづいていくと - - - 。
宮西さんの作品は動物物が多く、
そしてその多くが弱肉強食の世界。
オオカミとこぶたであったり、肉食獣と草食獣であったり・・・
喰うか喰われるかの世界の中にも、笑いがあって涙があって
そして、何よりも込められているものが『愛』ではないかと
思う。
恐竜シリーズもオオカミシリーズもどれもとても好きだが
特に好きなのが(私が)この 『おまえうまそうだな』
この直接的な弱肉強食界の台詞が、全く違った世界へと
物語を展開させてゆく。
そして、物騒なタイトルとは全く異なった内容で
私達読者を動物界の厳しさと、たとえその中でさえ存在する
『愛』という、人類にとって最大で最強の感情の奥深さや
素晴らしさを、『情』から変化してゆくという判りやすい展開で教えてくれている。
子供だけでなく、子供と関わる全ての大人に是非ともお勧めの
1冊である。 愛とは難しい物ではなく、とても判りやすく
抱きやすい感情であると教えられる。
愛ある人になりたい。 (ふらのっちさん 40代・ママ 女の子10歳、女の子8歳)
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