フェリシモ出版の「おはなしのたからばこ」シリーズ11巻は、『赤いくつ』。 誰もが知る、赤い靴にすっかり心をうばわれてしまう女の子のお話です。 美しいけれど、貧しくていつも裸足だった女の子カーレン。あるとき赤い靴を手に入れたカーレンは、その日からその靴のことが頭から離れません。お母さんのお葬式でも、教会での洗礼式でも、自分が素敵に見える赤い靴をはいてしまいます。 すると、恐ろしいことに、カーレンは赤い靴をはいたまま、踊り続けなければならなくなりました。靴を脱ごうとしても脱げず、どんなに疲れても止まることができません。 カーレンは暗い森や墓場などを踊りながら通り過ぎ、赤い靴をはいたことを心から後悔していきます。 そしてとうとう首切り人の家まで来たとき、カーレンは涙ながらにあるお願いをするのでした…。
アンデルセンが書いた、ぞくっとする物語を、人気作家の角田光代さんが静かな語り口で描き出します。女の子の心の痛みや恐ろしさ、後悔、そしてそこから改心に至るまで、読んでいるとせつなくなるような試練の物語ですが、時代を経ても何か強く訴える力を持っていますね。
網中いづるさんによるスタイリッシュなイラストが魅力的です。ガーリーでモダンな色合いと映像的な展開が、この悲しい物語を生き生きと動かします。赤い靴や踊りのシーンは、女の子の喜びが純粋に表されていて、とくに網中さんらしさが出ているすてきな場面です。 美しさと恐ろしさの対比がしっかりあり、読み応えのある一冊です。
(長安さほ 編集者・ライター)
「お願いです、出てきてください、そしてわたしの足を、この赤いくつごと、あなたのおので、切ってしまってください!」 アンデルセン40歳の時のこの作品を、角田光代さんという言葉の名手によってお届けできることがうれしい。カーレンが赤いくつを履いたとたん、足は勝手に躍りだす。止まらない。なんと足を切り落としても、足はくつごと躍っているのだ。赤いくつは魔物だ。その意味するところが何であるか、この物語の底に流れるものは、読む人が様々な受け止め方をするでしょう。物語と絵の印象がぴたりと重なった時、絵本は心に入り込んでくる。網中いづるさんは、この怖くて痛くて哀しく美しい物語の気配をのびやかに描ききった。ドレスや靴や少女がさり気なくおしゃれなのも網中さんならでは。塗り込めた絵と余白の広がる絵との絶妙な呼吸。新しい古典の誕生です。
違う絵本でも、同じお話を読んだことありますが、やはりこのお話は悲しいと感じます。キリスト教徒だったら、救われたカーレンのラストをハッピーエンドととるのかもしれませんけど。
でも、怖くて美しいと思いました。
ちなみに6歳の息子はこの話を好まないです。 (lunaさん 20代・ママ 男の子6歳)
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