10歳のオーガスト・プルマンは、どこにでもいるふつうの少年。 スター・ウォーズにくわしくて、ゲームが好きで、寝る前には本を読み、飼い犬のデイジーと大の仲良し。 でもひとつだけ、彼には他の人とちがうところがありました。
「ぼくの名前はオーガスト。外見については説明しない。きみがどう想像したって、きっとそれよりひどいから」
遺伝的にとても特殊な症状を持って生まれたオーガストは、顔のつくりがふつうとは大きく異なっています。 オーガストが町を行けば、ある人は悲鳴をあげ、ある人はぎょっとして目を逸らし、ある人は声をひそめてよからぬ話をはじめ……
たび重なる手術のせいで、学校に行ったことがないオーガスト。 今年からはという両親の勧めで、とうとう学校へ通うことに! しかし、子どもたちはオーガストを避け、うわさし、中にはいじわるくからかう生徒も。 ふだんはやさしくオーガストに接している子ですら、彼に触れたらその手をすぐに洗いにいく始末。 それでもオーガストが学校に通うのを楽しいと感じていたのは、入学してすぐにできた親友ジャックのおかげ。 いっしょに授業を受けたり、冗談を言って笑いあったり― ところがある日、そんなジャックが陰で自分の悪口を言っているのを聞いてしまいます。
「ぼくがすごくふつうだってわかっているのは、世界中でただ一人、ぼくだけなんだ」
10歳のオーガスト・プルマンは、どこにでもいるふつうの少年。 ふつうに傷つき、ふつうに泣き、そしてふつうに笑う。 これはそんな少年の巻き起こす、ふつうじゃないひとつの奇跡の物語。
「正しいことをするか、親切なことをするか、どちらかを選ぶときには、親切を選べ」
作中に登場するこの言葉が示す通り、この物語の主なテーマは『親切』です。 物語の中で描かれるオーガストの痛みは、そのほとんどが、わざと彼へいじわるをしてやろうとは”考えていない”人からもたらされています。 「関わらないように避ける」あるいは、「周りがしているのと同じ態度で接する」、そういう大多数の人々。 この物語で示される『親切』の意味は、決して重いものではありません。 ハイタッチ、親しみに溢れた愛称、ささやかなあいさつ。 みんながそれぞれに今よりもほんの少しずつでも親切になれたら、世界はずっとすばらしいものになる。 そんな風に心から信じさせてくれる、愛にあふれた一冊。
「他人の目」からオーガストがどう見えているのかを知ってしまった、姉のヴィア。 ある日を境に突然、オーガストから避けられるようになってしまった、クラスメートのジャック。 本作では彼らをはじめとして、6人の視点によってオーガストを巡る一年が描かれていきます。 しかし、それぞれの登場人物が抱く葛藤は、オーガストの学校生活についてだけのものではありません。 環境の変化と共に変わってしまった友情。 家族の中ですら感じる孤独と、他の家族をうらやむ気持ち。 思春期になって知る、他人からどう見られるかという怯え。 体が成長し、新しい友人と出会い、そういう大きな変化の中で誰しもが抱く苦悩。 オーガストの悩みだけでなく、そうした様々な葛藤を等身大に描ている点が、多くの読者の共感を呼ぶ魅力となっています。
とはいえ文体が明るく、オーガストのユーモアあふれる性格もあいまって、メッセージの深さとはうらはらに読み心地はさわやか! 感動必至のエンターテイメントとして、どんな人にもオススメできます。
「この世界は、オーガスト・プルマンにやさしくない」
オーガストの姉ヴィアはそう語ります。 しかし、ヴィアのボーイフレンドであるジャスティンは、その言葉がまちがいであると気づきました。
「この世界は目に見えない方法で、一番はかなげな生き物を守っている」
彼はなぜ、ヴィアの言葉がまちがいであると考えたのか? その理由を知ったとき、この世界のやさしさに、きっと心がふるえます。
(堀井拓馬 小説家)
オーガスト・プルマンはふつうの男の子。ただし、顔以外は。生まれつき顔に障害があるオーガストは、はじめて学校に通うことになった。だが生徒たちはオーガストの顔を見て悲鳴をあげ、じろじろながめ、やがて「病気がうつる」と避けるようになる。一方で、オーガストの話をおもしろいと感じる同級生は少しずつ増えていた。そんなとき、夏のキャンプで事件が起こる……。全ての人に読んで欲しい、心ふるえる感動作。
私には自信がありません。
もし、この物語の主人公オーガスト・プルマンのような男の子がそばにいたら話せるなんて。
オーガストは普通の男の子です。ただし、それは「顔以外」と注釈がつきます。
オーガストは、目がふつうあるはずのところから3センチも下についています。眉毛もまつげもない。耳は穴があいているだけ。鼻はぼってり肉がついて、そこから口にかけては「とろけた蝋」のようだ。
オーガストは生まれた時はもっとひどい状態だった。何度も整形手術を受けてきた。正式には「下顎顔面異骨症」というらしい。
想像してみてよ、もしそんなオーガストが自分たちの学校に入学してきたらということを。
この本を読んだあとでも、ひどいことだとわかっているが、私には自信が持てない。
オーガストは10歳の男の子。それまでは家でママが勉強を教えていたのだが、今度普通の学校に行くことになった。オーガストは最初すごく嫌がった。もっと小さい頃はずっと宇宙飛行士のヘルメットをかぶっていたぐらいだから。
それでも彼は学校に行く決心をした。感じの悪い同級生がいることを承知の上で。何故なら、そうではない同級生もいたから。でも、ハロウィーンの夜、信じていた同級生からも嫌な言葉を聞いてしまうオーガスト。
それでもオーガストには彼を愛してくれる人がいた。パパ、ママ、姉のヴィア。家族ならわかる。オーガストが何か悪いことをしたわけではないということを。だから、彼らは信じている。オーガストが学校になじむことを。友だちがたくさんできることを。
ただ、姉のヴィアだけは少し複雑。オーガストの存在を知られることで彼女もまた周りの冷ややかな目にさらせれてきたのだから。
想像してみて下さい。オーガストのような男の子が自分の弟だったらって。
そう、この物語を読むには、たくさんの想像が必要です。
もし、・・・。もし、・・・。そこにはいつもオーガストがいるはずです。
オーガストにたくさんの友達ができるかどうかは物語を最後まで読むとわかります。
それでも、正直に書けば、私にはまだ自信がありません。 (夏の雨さん 60代・パパ )
|