森に春が来て、うさぎのミミナちゃんは冬ごもりからなかなか起きてこない友だちを起こしに行きます。 「おきて おきて もうはるよ」 「おねぼうさんはだあれ?」 くまのフワくん、ヤマネのクルリくん、とかげのスールちゃん、かえるのピョントくん……。 みんな気持ちよさそうに眠っています。 ミミナちゃんは、森で摘んだ、いいにおいの花をかごに入れて、ひとりひとり、友だちをたずね、花束を置いてまわるのです。
「おきて おきて もうはるよ」 「おねぼうさんはだあれ?」 繰り返されるやさしい調子に、自然に引きこまれます。 ミミナちゃんが「トントン」とたずねる、友だちのおうちもそれぞれ素敵。
でも……はやく一緒に遊びたいのに、誰も起きてくれない……。 おひさまがあたたかく照らす野原で、ミミナちゃんも眠くなってしまいますが……。
『マルマくんかえるになる』(ブロンズ新社)、『たんぽぽのおくりもの』(ひかりのくに)などの文章を手がける詩人、絵本作家の片山令子さんは、他にも夫で同じく絵本作家の片山健さんとの『たのしいふゆごもり』(福音館書店)をはじめとした、たくさんの作品を世に送り出しています。 そのどれもがあたたかさと、ほのかなユーモラスさが心地いい絵本ばかりです。
絵を手がけたあずみ虫さんは、アルミ板をカッティングする技法が独特の作家さん。 植物や生きものの特徴をよくとらえ、生命力のある雰囲気が魅力的です。 (個人的には、山野草のカタクリや、野いちごの白い花の可憐さにときめいてしまうほど!) それもそのはず、絵本に登場する植物は、学研の植物図鑑編集部がひとつひとつチェックし、監修されたというプロのお墨付き!
「おねぼうさんはだあれ?」と子どもへの語りかけのような言葉から、素朴で喜びあふれるエンディング。 親子で何度も読みたい絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
「おきておきて、もうはるよ」うさぎのミミナちゃんが、冬ごもりから起きてこない友だちを起こしに出かけます。でも誰もなかなか目を覚ましません。そこで、いいにおいの花束を枕元へおいていくと、やがて友だちも花のにおいに気づいて…。春の訪れを温かい筆致で描いた絵本です。 読んであげるなら3歳から、ひとりで読むなら小学低学年から。
<編集部よりひとこと> 友だちを起こしに行ったはずのミミナちゃんが、ぽかぽか陽気でお昼寝してしまうところがユーモラス。物語のおしまいには、みんなで遊んでいる様子が描かれ、喜びがあふれているのも魅力的です。 「おねぼうさんはだあれ? 」と我が子に優しく語りかけてあげたい、そんな気持ちにも寄り添ってくれる作品です。
<著者について> ◆片山令子 1949年群馬県生まれ。詩人、絵本作家。夫・片山健さんとの絵本に『たのしいふゆごもり』(福音館書店)がある。ほかに『ゆきのひのアイスクリーム』(柳生まち子・絵 福音館書店)など。2018年、病気のため他界。 ◆あずみ虫 1975年神奈川県生まれ。絵本作家、イラストレーター。安西水丸氏に師事。アルミ板をカッティングする技法が独特。絵本『わたしのこねこ』(澤口たまみ・文 福音館書店)で産経児童出版文化賞美術賞を受賞。
冬眠をしないうさぎさんが、冬眠中のお友達のところに「起きて〜」と訪ねていきますが、まだまだ起きてくれません。
そこで、春のお花を置いていきます。
次々に訪問して、最後に日当たりのいい場所でゆっくりしていると、今度は自分がうとうと。。。
あずみ虫さんは、アルミ板の切り絵で味わい深い作品をたくさん出版されていますが、今回は可愛いがぎゅっとつまっていて「本当にこれがアルミ板?」と驚くような柔らかなイメージの絵になっています。春の花を見に行きたい、動物たちのように早くお友達と会いたいなと思いました。 (ロアルダールさん 40代・その他の方 )
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