この冬最後の寒さがやってきた日、森で一番背の高いけやきの木が倒れました。森で一番歳をとっていたのです。 倒れたけやきの周りに、森に住む動物たちが集まります。日当たりがよくなったけやきの周りには、他の木がどんどん伸びていきます。 やがて時が過ぎて、静かに土にかえったけやき。そこには新しい木の芽が生まれてきました。
一昨日、この絵本を「お、木の話かな?」と思って、本屋さんの新刊コーナーで立ち読み
しました。そして、どうしてももう一度この絵本を読みたくて、昨日また立ち読みに行きま
した。(本屋さん、ごめんなさい!)
森で一番大きかった“けやき”の話です。
その堂々とした雄姿は森の他の樹木や動物たちからの憧れの存在でした。
そんな大木が、ある冬の日に音を立てて倒れてしまい、周りの樹木の方が動揺します。
そして、けやき自身も当初は喪失感に襲われるのですが、これまでのっ視界と違う視界、
そして違う付き合いが小動物や植物と生まれて、慰められ、現状を受け留められ、
そして更に長い年月をかけて、腐食し土に戻っていくという話です。
一言で言うと、「生きとし生けるものの定め」が描かれている絵本で、
最初の数ページはただの樹木しか描かれていません。
しかも、その樹木には顔などはついていなく、背景が真っ白なところに葉が落ちた樹木が
描かれているので、ああ、本当に寒い日に起きたことだったんだなっと思わされます。
そして、これまで、こうやって何十年も、この寒さにこの木は耐えて立ってきたんだろうな
と同時に感じさせられます。
ページが進む度に年月が過ぎ、あの真っ白だった背景とは逆に、秋に真黄色の落ち葉で
覆われる倒れた老木のページが、その最初のページと実に対照的で惹きつけられ、
思わず綺麗とつぶやきました。
これはきっと、森の樹木達からの老木への今までの賞賛を表しているんだろうな。
そして最後に、また色が変化をして、倒れた老木を緑の蔦系の植物が覆い、老木の心だけ
ではなく読み手の心にも「再生」とか「新しい生命」とかを意識させられ、けやきの姿は無になります。
この老木のけやきの心情や状態を表している“配色のテクニック”にすっかり魅惑されました。
そして、何よりも、この絵本が二度も私を本屋に行かせたのは、40歳を過ぎて、
人生半分を過ぎたからでしょうか?
ただの木の話ではなく、人間にもとても当てはまる話であることをとても感じたからかもしれません。
何故か、70歳を超えた父親を思い出させる絵本でした。
自分の人生を振り返って、肩で風を切るような黄金時代もあり、
そして老いてから自分も周りのもの中の1つであることを悟り、形を変えた楽しみや喜びが
あることを知る。
これは小さい子には100%は、まだ悟れないでしょうね。
どちらかというと大人向けの絵本だと思います。
万人受けをする本ではないかもしれませんが、私には心に響く絵本でした。
是非、一度読んでみてください。 (汐見台3丁目さん 40代・ママ 男の子5歳)
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