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ディズニープリンセス じぶんもまわりもしあわせにする おやくそくブック

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夏の雨

パパ・60代・埼玉県

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夏の雨さんの声

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自信を持っておすすめしたい ぞうはどこでも人気者  投稿日:2014/11/30
ぞうはどこへもいかない
ぞうはどこへもいかない 作: 五味 太郎
出版社: 偕成社
 童謡「ぞうさん」は、詩人まどみちおさんの代表作である。
 「ぞうさん/ぞうさん/おはながながいのね/そうよ/かあさんもながいのよ」。
 きっと誰もが唄ったことがあるだろうこの詩は、実にシンプルで明解だ。
 だから、親しまれているのだろう。
 この歌がなくても、子どもはぞうさんが大好きだ。
 身体が大きく、動きもゆっくり。大きな耳、長い鼻。子どもにもわかりやすい体型をしている。
 パンダやコアラといった新しい人気者が現れても、ぞうさんはダントツに人気が高い。

 絵本作家五味太郎さんの描くぞうさんもわかりやすい。
 たぶん写実という点ではちがうのだろうが、これはやはりぞうさんでしかない。
 ある日草原を歩いているぞうさんに近寄る怪しいヘリコプター。そこからのびる大きな網。
 ぞうさん、あぶないよ。
 ページから子どもたちの叫ぶ声が聞こえそうだ。
 連れ去られたぞうさんはもっと大きな飛行機に乗せられて、もっと遠くに運ばれていく。
 そして、ついに、ぞうさんは飛行機から落とされて。
 ページをめくる子どもたちの心臓の音が聞こえそうだ。

 心配しないで。
 ぞうさんはぞうさんよりもっと大きな落下傘でふんわりと地上に届く。
 そこは街の動物園。
 ぞうさんを歓迎する人々でいっぱいだ。
 でも、ぞうさんはうれしくなんてない。
 だって、突然連れてこられたんだもの。
 さあ、ぞうさんは住んでいた草原に帰れるでしょうか。

 五味さんの絵は、まどさんの詩のようにとてもシンプル。
 配色もごちゃごちゃしない。
 緑、赤、青、灰色、クレヨンそのままでわかりやすい。
 僕にも描けるよ、そんな子どもたちの声が聞こえそうだ。
 それでいて、ちょっとハラハラ。
 だって、ぞうさんがどこに行くのか心配したり、あんなに大きなぞうさんが空に浮かびあがったりするのだから。

 きっと子どもたちは五味さんの絵本が大好きにちがいない。
 だって、五味さんの絵本には子どもの心がいっぱいだもの。
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自信を持っておすすめしたい これは夢か、それとも「近未来」か。  投稿日:2014/11/23
夏のルール
夏のルール 著: ショーン・タン
訳: 岸本 佐知子

出版社: 河出書房新社
 「近未来」というのは、どのぐらい先のことをいうのだろう。
 手塚治虫の代表作「鉄腕アトム」で主人公のアトムが誕生するのは2003年という設定になっている。漫画雑誌に連載されていたのが、1950年代だから、50年先あたりが「近未来」ということになるのだろうか。
 SF映画などでは核戦争が起こって地球に人が住めなくなるのも「近未来」だし、宇宙への移民が始まるのも「近未来」だ。
 どちらかといえば、けっしてバラ色ではないのが「近未来」のような気がするがどうだろう。

 名作『アライバル』で多くの読者を魅了したオーストラリアの絵本作家ショーン・タンのこの作品も「近未来」を描いた作品だ。(あるいは、夢か)
 登場するのは、兄と弟。
 この二人以外に人の影はない。
 二人だけで過ごした「去年の夏」。弟はそこで生きる知恵のようなものを学ぶ。
 たとえば「赤い靴下を片方だけ干しっぱなしにしないこと。」
 では、干しっぱなしにしたらどうなるのか。それは絵で解説されている。
 兄弟の数倍もある巨大ウサギが赤い目を光らせて横行する。
 たとえば「裏のドアを開けっぱなしたまま寝ないこと。」
 ではどうなるか。
 部屋の中に異界のものたちであふれかえってしまう。
 そういうなんともいえない世界に兄弟を二人きりで生きている。

 はたしてこれは夢か、それとも「近未来」か。
 どうしてショーン・タンはこのような世界を描いたのか。
 実は私には何にもわかっていない。
 そこにファンタジーすら感じえない。
 それってどうなの?
 読む時を間違ったのだろうか。
 もし、私が十代の少年であったら感じるものは違うのだろうか。
 勇気とか冒険とか。
 もし、私が二十代の青年であったら受け取るものは違うのだろうか。
 反省とか悔恨だとか。

 一冊の絵本は読者にさまざまな思いをもたらす。
 そこにあるのは、自由だ。
 けれど、この作品は私には少し難解すぎる。
 それはショーン・タンのせいではなく、私のせいだと、たぶんそう思う。
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自信を持っておすすめしたい スイートポテトでおならがでるか  投稿日:2014/11/09
さつまのおいも
さつまのおいも 文: 中川 ひろたか
絵: 村上 康成

出版社: 童心社
 さつまいもが好きです。
 あの形、紡錘形なんてりっぱな名前ではなく、頭とお尻がすぼまって、細長いのがあったり、でぶっちょがいたり、型にはまっていないのがいい。
 色もいい。茶色というか土の色というか、いってみれば「さつまいも」色なんですが。
 何より味がいい。
 天ぷらにしてもおいしいし、ふかしてもおいしい。最近はスイートポテトなんて洒落た名前で出たりしていますが、やはり焼き芋が一番。
 そういえば、焼きいも屋さんの「いしやきーも」なんていう声も聞かなくなりました。

 私たちにそれほど親しみのある「さつまいも」を絵本にしたら、こんなにおいしい、いえ楽しい絵本になりました。
 まあ素材はいいですから。
 中川ひろたかさんが文を書いて、村上康成さんが絵を描いています。
 ごはんも食べるさつまいもなんて想像するだけで楽しいです。トイレでしゃがんでるさつまいも、なかなか絵にするのは大変だったでしょう。
 村上さん八百屋さんでさつまいもをいっぱい買ってきて、このさつまいもはお風呂にはいっているのにしようとか、トイレはこれに座らせよう、なんて考えたのかな。
 もちろん、最後はきっと食べちゃったでしょうが。

 そんな平和なさつまいもの世界にある日子どもたちがやってきて、いもほりが始まりました。
 いもほりを「つなひき」に見立てるなんて、中川さんのセンスのよさが光ります。
 もちろん、子どもたちが勝って、最後は恒例の落葉を集めて焼きいも大会。
 でも、落葉で焼きいもなんていう光景はすっかり見かけなくなりました。
 今の子どもたちは知らないのではないかしらん。
 それでも、そんな絵がすっと子どもたちにはいってくるとしたら、日本人のDNA恐るべし、です。
 それほど、さつまいもは日本人に愛されているのです。

 そして最後はこれも恒例の、おなら。
 おならがプーとでるくらい、さつまいもを食べたい。
 スイートポテトでは出たことがない。
 あれはどうしてでしょう。
 現代日本の7不思議かもしれません。
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自信を持っておすすめしたい 素直な心で見てみれば  投稿日:2014/11/02
へいわってすてきだね
へいわってすてきだね 詩: 安里 有生
画: 長谷川 義史

出版社: ブロンズ新社
 この絵本の文(実際には詩ですが)を書いた安里有生(あさとゆうき)くんは2007年生まれの小学生です。
 沖縄で生まれ、お父さんに仕事の関係で与那国島に移りました。
 この詩は2013年に沖縄県平和祈念館が募集した「児童・生徒の平和メッセージ」で、小学生低学年・詩の部門で最優秀賞を受賞したものです。
 絵を描いたのは、独特のタッチと軽快な大阪弁で人気の高い長谷川義史さん。
 ダジャレの絵本もたくさん描いていますし、『ぼくがラーメンたべてるとき』といったような考えさせられる絵本も描いています。

 この絵本を描くにあたって、長谷川さんは実際に与那国島まで行って安里くんや安里くんの家族に会っています。
 与那国島の風景や与那国馬のことも描かれていますが、実際に見たそのままなのではないかと思います。
 平和についての強いメッセージ性のある絵本ですが、実は与那国島の風景や動物、人々の姿が生き生きと描かれているからこそ、メッセージが生きているように思います。
 「平和」といえば、多くの人がそれを願います。
 では、具体的にどのような状態を「平和」というのか、そのあたりを安里くんはさりげなく書いています。
 だから、伝わってくるといえます。

 安里くんが思う「平和」は、「おともだちとなかよし」だし、「かぞくが、げんき」だけではありません。
 「ねこがわらう」のも「平和」だし、「よなぐにうまが、ヒヒーンとなく」のも「平和」なのです。
 だからこそ、そんな「平和」がずっと続けばいいと思うし、「ぼくも、ぼくのできることからがんばるよ」とうたえるのです。
 私たちは「平和」の意味を難しく考えすぎることがあります。
 おとなだから、難しい言葉で説明しようとします。
 おとなだから、さもわかったふりをします。
 でも、安里くんはそんな重荷をひとつも持っていません。
 自分の目の前に広がる風景を大事にしたいと願っているだけです。

 タイトルはストレートですが、それでいいのではないでしょうか。
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自信を持っておすすめしたい 無花果は何と読むのでしょう?  投稿日:2014/10/26
まさ夢いちじく
まさ夢いちじく 作・絵: クリス・ヴァン・オールズバーグ
訳: 村上 春樹

出版社: 河出書房新社
 漢字の問題から。
 「無花果」という漢字を読んで下さい。よくある問題ですから知っている人も多いでしょうが、答えは「いちじく」。
 夏から秋にかけて食卓にあがることの多い果物です。
 家にいちじくの木があると家が栄えないとか子どもができないとか、いちじくには迷信の類が結構ありますが、一方で不老長寿の果実と呼ばれることもあるそうです。
 おいしいのでやっかんだのかもしれません。
 そんないちじくを食べると夢が本当のことになってしまう。そんなお話がC.V.オールズバーグのこの絵本です。

 主人公は「おそろしくやかましや」である歯医者のビボットさん。
 少しばかり髪が薄くなっています。鼻の下には「エヘン」といわんばかりの八の字ひげ。蝶ネクタイもキザっぽい。
 ある日歯の治療をしたおばあさんが治療費の代わりに置いていったのがふたつのいちじく。
 怒るビボットさんにおばあさんはこういいます。
 「これはまさ夢いちじく。あなたの夢を何でも叶えてくれます」

 いちじくはふたつ。
 まずひとつめを食べたビポットさんは本当にそれが「まさ夢いちじく」だということに気づきます。
 そうなると、残ったいちじくを食べる時はうまい話が叶うようにしないとと欲が出ます。
 こういうところは日本の昔話にもよくあるパターンです。
 それからの何週間をビポットさんは自分が世界一の金持ちになる夢を見る特訓を始めます。
 夢をコントロールしようというのですから、人間は欲がでると何を考えることやら。
 宝くじがあたるように枕の下に忍ばせるのによく似ています。
 そんなビポットさんがようやく残りの一個のいちじくを食べることを決心しました。
 さて。

 この絵本でもC.V.オールズバーグの絵筆はさえわたっています。
 まず構図が大胆です。上からの目線、下からの目線、対象を大胆に大きく。
 それによって絵に動きがでています。
 それにビポットさんのいやらしいさがいいですね。この人なら、こういう結末になっても仕方がないと読者に思わせるくらい、いやらしく描かれています。
 もちろん、この作品も村上春樹さんの翻訳。

 あなたがもし「まさ夢いちじく」を手にしたら、ビポットさんにならない保証なんてありません。
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自信を持っておすすめしたい 怖い絵本 − なおみ、あなたはいくつ?   投稿日:2014/10/19
なおみ
なおみ 作: 谷川 俊太郎
写真: 沢渡 朔

出版社: 福音館書店
 子どもの頃読んだ漫画雑誌に「日本の怪奇現象」みたいな読み物がよく特集されていた。
 その中のひとつに「髪の毛が伸びる人形」という記事があったのを、この絵本を見て思い出した。
 あれはどこかのお寺に奉納されていた人形ではなかったか。
 あれから何十年も経っているから、もしいまだに伸びているとすれば、すごい。
 あの記事が本当の話なのかわからないが、子ども心になんとなくありそうだと思っていた。
 それは、人形の力だろう。
 人の魂によりそうような力が人形にはある。

 その時の記事の人形も、この絵本の人形のような市松人形だったように思う。
 それにしても、怖い絵本だ。
 詩人の谷川俊太郎さんが文を書き、写真家の沢渡朔(はじめ)さんが写真を担当している。
 沢渡さんといえば、『少女アリス』で人気を博した写真家だ。
 写真といえば、その技術がこの国に入ってきた時、被写体の人の魂をとるとか、三人並ぶと真ん中の人が先に死ぬとかよく言われたものだ。
 昭和30年生まれの私でさえ、そんな迷信を耳にしたことがある。

 この作品でいえば、逆に写真が人形に魂を吹き込んでいるかのよう。
 窓辺に佇む市松人形、彼女の名前が「なおみ」、はまるで生きているようだ。
 本物の少女(モデルは石岡祥子)と二人で本を読んでいる場面など、息をしているのがどちらかわからない。
 まだ初潮すら迎えていない少女と「なおみ」。
 けれど、少女は確実に成長する。
 しかし、「なおみ」はいつまでも「なおみ」のままだ。
 「なおみ なおみ/わたしは むっつ/なおみ なおみ/あなたは いくつ?」
 やがて、少女は口をきかない「なおみ」を遠ざけることになる。
 箱に静かに横たわる「なおみ」。
 目は開いたまま。
 「なおみ」はこうして時間の奥へ追いやられていく。
 「なおみ」もまたいつか読んだ怪奇記事の人形のように、いつまでも髪の毛が伸び続けたのだろうか。

 怖い絵本である。
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自信を持っておすすめしたい 秋の七草、いえますか?   投稿日:2014/10/05
14ひきのやまいも
14ひきのやまいも 作・絵: いわむら かずお
出版社: 童心社
 萩、芒、葛、撫子、女郎花、桔梗、藤袴。
 秋の七草である。
 これらは秋に咲く代表的な植物だ。
 秋は紅葉だけでなく、七草のように花として愛でることもできる季節でもある。
 いわむらかずおさんの人気シリーズ「14ひき」は季節ごとに作品があって、花を愛でるようにページを開けば季節が味わえるのがいい。

 この巻は秋の山に14ひきのねずみ家族がやまいもほりにでかけるお話。
 一面秋の、あたたかい色調でうまっている。
 さて、やまいもの長いつるが伸びている場所にやってきた14ひきだが、ここで登場するのが「むかご」。
 「むかご」って何だ?
 文にはこうある。「やまいものつるになってる、おいしいむかご」。
 絵は木に登ってその「むかご」を取っている子どもねずみたちの姿。
 「むかご」って何だ?

 ネットで調べると「やまいもなどの地上の茎の葉腋にある芽が肥大して,球根と同様の性質をもつ塊状組織を形成する」とある。
 なかなか実物を見る機会は、今の子どもたちにはないかもしれない。
 こういう丁寧さがいわむらかずおさんの魅力といっていい。
 14ひきの中のおじいさんねずみが「いもほりめいじん」なように、失礼かもしれないが、いわむらかずおさんはおじいさんの知恵袋だ。
 そもそも子どもたちはやまいもがどういう状態であるのかも知らないのではないか。
 スーパーに行けば、風情もなく積んであるだけだし。

 本来そういうことは自然と学べたはず。
 秋の七草にしても、街の中ではなかなか見ることはない。
 そうなると、秋の七草さえ身近でなくなってくる。季節感がなくなって、ひどい目にあうのは私たちなのに。
 だからこそ、いわむらさんの「14ひき」シリーズは私たちが大切にしないといけない絵本だ。
 子どもたちに「歳時記」は難しいかもしれないが、いわむらかずおさんの絵本ならやさしい。
 やさしくて、季節感があって、しかもとろろ汁のおいしい匂いまでついてくる。
 いうことないではないか。
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自信を持っておすすめしたい 物語は読者の手の中にある。  投稿日:2014/09/28
ハリス・バーディックの謎
ハリス・バーディックの謎 作・絵: クリス・ヴァン・オールズバーグ
訳: 村上 春樹

出版社: 河出書房新社
 物語はひとつのきっかけから始まる。
 一本の電話。食べかけのスープ。開きかけた扉。風に揺らめく灯り。
 そこから何百何千何万文字の物語が始まる。
 C.V.オールズバーグのこの絵本を読むと、そのことがよくわかる。
 ここにある14枚の絵と題名、そして短すぎる説明文は、読むものに物語を予感させる。
 ここから始まる。
 そして、その物語はすべてあなたの物語だ。

 14枚の絵は、30年前に出版社に預けられたものだという。
 持ち込んだのは、ハリス・バーディックという男。
 そんなことが本の「はじめに」で書かれている。
 ここからすでにC.V.オールズバーグの魔法が始まっている。彼の物語に誘われたといっていい。
 そして、1枚めの絵。
 ベッドで眠っている男の子。開いた窓からいくつかの光がはいってきている。
 付けられた題名が「天才少年。アーチー・スミス」。
 短い説明文はこうだ。「小さな声が言った。「あの子がそうなのかい?」」
 さあ、あなたならどんな物語を紡ぎだすだろう。
 続く、2枚めの絵。
 ぽっこり膨れた絨毯に向かって、椅子を振り上げている頭髪の薄くなった男性。
 付けられた題名が「絨毯の下に」。
 「二週間後にまたそれが起こった。」と説明文がある。
 果たして絨毯の中には何かいるのだろうか。読者の想像を掻き立てる。
 3枚めの絵は、水辺の少年と少女が描かれている。きらきらと水面に光が跳ねて。
 題名は「七月の奇妙な日」、これだけでも十分ミステリアスだが、「彼は思い切り投げた。でもみっつめの石は跳ねながら戻ってきた。」なんて書かれると、一体このあと何が起こるのか気にかかる。
 いや、物語は読者の手の中にある。
 このあと、少年と少女に何が起こるのか、すべては読者に委ねられている。

 だが、生きていくということは、C.V.オールズバーグのこの絵本に似ていないだろうか。
 日々のちょっとしたことが物事を動かしていく。
 そして、それがその人の物語を作っていく。
 そんなことを教えてくれる、素敵な絵本だ、この本は。
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自信を持っておすすめしたい むかし、むかし、あるところに・・  投稿日:2014/09/21
ちいさなねこ
ちいさなねこ 作: 石井 桃子
絵: 横内 襄

出版社: 福音館書店
 第二次安倍内閣の重要課題に「元気で豊かな地方の創生」が掲げられ、地方創生大臣が誕生しました。
 高齢化、少子化、そして産業の空洞化で地方が疲弊していることは従来からいわれていて、そこにスポットライトをあてたのは適切な判断だろうと思います。。
 どう結果を導き出していくか、石破地方創生大臣の腕のみせどころでしょう。
 街は、地方だけでなく、確実に変化しています。
 昭和30年代の風景を探すのは至難のわざです。
 だから、映画評論家の川本三郎さんは昭和30年代の日本映画は文化資料としても貴重だといっています。
 それと同じことが絵本の世界にもいえます。

 石井桃子さんが文を、横内襄さんが絵を担当しているこの絵本は、昭和38年に「こどものとも」に掲載され、昭和42年に絵本になっています。
 だから、ここで描かれている街や車はその当時のものです。
 おおきなへやからとびだしたちいさなねこのお話ですが、ちいさなねこがとびだした蔵のある街など最近ではみかけなくなりました。
 ちいさなねこは自動車に轢かれそうになるのですが、今ならまちがいなく轢かれています。車の量がちがいます。

 そのあとちいさなねこは大きな犬と出合いますが、これも昭和ならではの風景です。
 今なら首輪でつながれているでしょう。こんな大きな犬が首輪もなく街を歩いていたら、まちがいなくおまわりさんが飛んできます。

 大きな犬に追いかけられて樹にのぼったちいさなねこですが、ちゃんとおかあさんねこが見つけてくれて無事に家に戻ることができました。
 微笑ましい母子ねこのお話ですが、文化資料としての価値が高い作品といえます。
 いまの若いお父さんお母さんの知らない街の風景ですから、おじいちゃんやおばあちゃんと一緒に読んでみるといいですね。
 それこそ、「むかし、むかし、あるところに・・・」の昔話になってしまいそうですが。
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自信を持っておすすめしたい 色彩を持たないオールズバーグと、彼の巡礼の年  投稿日:2014/09/14
ベンの見た夢
ベンの見た夢 作・絵: クリス・ヴァン・オールズバーグ
訳: 村上 春樹

出版社: 河出書房新社
 翻訳者である村上春樹さんに「字が一字もなくてもこの絵本は成立してしまう」とまで言わしめてしまうC.V.オールズバーグの絵本ですが、この作品はモノクローム。
 しかも、ほとんど文字がないので、村上春樹さんのいうことを実践するのに適した一冊です。
 これがなかなかいい。
 昔のモノクロームの映画が見ている感じがします。
 最近の映画はちょっと色が跳ねすぎて、目が疲れます。
 その点、この作品はそうではない。

 この作品で良くわかるのが、動きです。
 とても動きのある絵が続きますから、まるでアニメーションを見る感じで読めます。
 はじめにこの物語の主人公の二人、ベンとマーガレットが自転車をこいでいます。
 最初は野球をしようと思っていた二人ですが、マーガレットが明日の地理のテスト準備で家に帰るというので、ベンもつまらないので家に帰って地理の教科書を広げます。
 ベンの夢がここから始まります。

 絵本というのは、書かれている言葉にこだわらなくてもいいと思っています。
 読んであげる人が自由に言葉を変えてもいいのではないか。
 相手の表情や心に合わせて、言葉を変えていいのではないでしょうか。
 特にこの絵本のようにほとんど文字がない作品は、その自由度が増えます。
 だから、読み聞かせなんかにはとてもいい。

 村上さんが「字が一字もなくてもこの絵本は成立してしまう」といった気持ちがよくわかります。
 字がない分、絵をいっぱい楽しむことができます。隅々まで楽しめます。
 この絵本には最後に絵をいっぱい楽しんだ人にしかわからない仕掛けがあります。私は残念ながらページを逆戻りして、その仕掛けを見つけるはめになりましたが。

 そういえば、村上春樹さんの最近の長編小説といえば『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』でしたが、まさかこのオールズバーグの絵本がヒントになったってこと、ないですよね。
 村上春樹さんの小説のファンだったら、翻訳絵本も絶対はずせません。
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【連載】絵本ナビ編集長イソザキの「あたらしい絵本大賞ってなに?」

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