
夜、満天の星のもと、居心地の良さそうなゲル(モンゴルの遊牧民の住居)の中で家族がくつろいでいます。外では犬や羊たちが眠り、こどもたちはおじいさんの話に耳を傾けています。「こころのはな」という花のあさつゆで淹れたお茶を飲むと長生きができる、そう聞いた少年バートルは、自分もそのお茶をお母さんに飲ませたいと思います。そして家族が寝静まった真夜中、バートルはたったひとりで馬に乗って「こころのはな」を探しに行くのです。 木が生い茂った森の暗闇の中、黒い影がざわざわと揺れ、動物の目が光りおばけに見えます。モンゴルの伝説の怪物「マンガス」(あたまがたくさんあって人も動物もひと飲みにしてしまう!)や、森の中をさまよう山姥「ショルマス」の話を思い出し、足がすくむバートル。でも彼は、花のあさつゆのため、無我夢中で先へ先へ・・・。
「おかあさんのお乳は、花のしずくを集めてわかしていれた、一杯のお茶ほどに貴重である」 自分を生み、育ててくれたお母さんへの恩を敬ったモンゴルの言い伝え。その言葉を元に書かれたのがこの絵本です。 作者は、日本在住のモンゴル人作家イチンノロブ・ガンバートルさんと、画家のバーサンスレン・ボロルマーさん。モンゴルの児童書や教科書の挿し絵を多数手がけてきたボロルマーさんの描く絵は、細やかで優しく、エキゾチックな魅力に溢れています。模様まで丁寧に描き込まれた民族衣装や、ゲルの中の調度品、食器など、ひとつひとつからモンゴルの伝統的な暮らしや文化への作者の思いが伝わってくるようです。 そして、広大な草原と一面の花畑、帰り道に見える羊の群れ。その風景の絵には、見る人を引き込む静かな力に満ちています。絵の中の地平線をじっと見ていると、吹いている風を感じそうなほど! 最後のシーン、家に戻ったバートルを抱きしめるお母さんと家族の幸せそうな顔を見て、誰もがほっとすることでしょう。 モンゴルの風景の美しさと、バートルのお母さんへのまっすぐな思いが、すがすがしく心に残る作品です。
(掛川晶子 絵本ナビ編集部)


おかあさんにありがとうを伝えたい
自分のことを生み、育ててくれたお母さんの恩というものは、とても大きいものです。その恩を返すことはきっと一生かかってもできないでしょう。モンゴルの人々は、その大きな恩を敬って、「お母さんのお乳は、花のしずくを集めてわかしていれた、いっぱいのお茶ほどに貴重である」と言い伝えてきました。この伝説をもとにこのお話はできています。 主人公のバートルは、おじいちゃんから「心の花の朝露を集めてお茶を飲むと長生きできる」という話を聞いて、お母さんに飲ませてあげようと、心の花を探しに、夜ふけの森に馬で出かけました。森には、こわ〜いこわ〜い化け物がいるといわれています。 小さな少年の純粋な心からのプレゼントが、お母さんのハートに届くやさしい物語です。
編集者からのおすすめ情報 モンゴル出身の画家、ボロルマーさんの絵は、やさしく、繊細でありながら、愛嬌たっぷりのキャラクターが生き生き描かれています。モンゴルの伝承をもとに創作されたこのお話は、日本人の心にも響いてきます。

モンゴルの伝説を基に創作された作品。
伝説という形で大人から子どもへ語り継がれるお話は、
人々の想いがギュッと詰まっていることを感じました。
心の花の朝露を集めてお茶を飲むと長生きできる、という昔話を聞いた
バートル少年は、夜中に家を抜け出して、心の花を探しに行くのです。
外は真っ暗、目が慣れてきても、恐ろしい化け物の気配を感じるのです。
でも、バートルは、ついに心の花を探し当てたのです。
小学校のおはなし会で読みましたが、暗い森の中のくだりは子どもたちも共感していたのか、
真剣なまなざしで聞いていました。
心の花は、小さくて白い花。
その群生している様子は本当に素敵でした。
何より、バートルの、母への想いがいっぱい感じられて、心がほっこりしました。
そこここに描かれたモンゴルの人々の服装や道具なども、
たっぷりと見てほしいです。 (レイラさん 40代・ママ 男の子18歳、男の子15歳)
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