全606件中 91 〜 100件目 | 最初のページ 前の10件 8 9 10 11 12 ... 次の10件 最後のページ |
大人に読んで欲しい絵本です
|
投稿日:2023/08/06 |
「本書は絵本という体裁をとっていますが、決して子供のためだけに書かれた本ではありません。」
これは、この絵本『世界で最後の花』を訳した村上春樹さんが「訳者あとがき」に記した文章です。この文のあとに、こうあります。
「「大人のための寓話」とした方が、作者の真意はより正確に伝わるかもしれません。」
もし、この絵本を絵本だから子供が読むものを思わないで下さい。
むしろ、大人である読者こそ、手にして欲しい一冊あることは間違いありません。
この絵本が刊行された1939年はナチス・ドイツがポーランドに侵攻して第二次世界大戦が勃発した年です。
そんな時、「みなさんもごぞんじのように、第十二次世界大戦があり」という一文で始まる絵本が刊行されていたという事実に驚きます。
「第十二次世界大戦」。これは誤植ではありません。
この大戦によって、人類は滅亡寸前までいきます。
人間にはもう気力すら残っていません。
そんな世界で、一人の若い娘が「世界に残った最後の花」を見つけます。
唯一彼女の話を聞いてくれた若者と花を育てていきます。
二人は忘れていた「愛」を取り戻しました。
やがて、人間はまた生き生きと活動を始めます。
集団ができ、互いに主張を始めます。
そして、また…。
この絵本の冒頭に、作者のジェームズ・サーバーが娘ローズマリーに宛てた言葉が載っています。
「君の住む世界が、わたしの住む世界よりもっと善き場所になっていることをせつに願って」
私たちは彼の言葉にちゃんと答えられたのでしょうか。
|
参考になりました。 |
|
0人
|
|
|
現代に通じる視点
|
投稿日:2023/08/01 |
『星新一ショートショートセレクション5』(理論社)。
表題作である「番号をどうぞ」をはじめとして、16篇の「ショートショート」が収められた、児童書。
装幀・挿絵(それぞれの作品にひとつ挿絵がついています)は、和田誠さん。
星さんの作品は「SF」というジャンルに入るのだが、起こりそうな近未来をどこまで実現しそうな世界として描くことに作品としての妙があるのだと思う。
表題作である「番号をどうぞ」の場合、最近大きな話題となっているマイナンバーカードの相次ぐトラブルを予知したかのような作品なのに驚いている。
物語はこうだ。
休暇を利用して山の湖にやってきたエヌ氏だが、誤ってボートから転落してしまう。
はずみで自身を証明するカードの類をすべて失くしてしまう。
そのせいか、エヌ氏は買い物もできず、車にも乗れない。行政のサービスさえ受けられない。
言われるのは、ただ「番号をどうぞ」。
「用件にしろ要求にしろ、どんなに遠くても、なにもかも回線とコンピューターで一瞬のうちに片づく時代。それなのに番号が思い出せないため、こんなひどいことになろうとは・・・」
まるで、マイナンバーカードに縛られて、明日の私たちの姿のようではないか。
星さんの作品を今読むと、これはまるで現代のあれのようだとか、現代のどこかの起こっているようなことだとか、そんな風に思えるものがたくさん出てくる。
現代との類似性を見つけるのも、星新一作品の楽しみのひとつだろう。
|
参考になりました。 |
|
0人
|
|
|
伊勢英子さんが描く雪女に魅了されます
|
投稿日:2023/07/30 |
『雪女』はいうまでもなく小泉八雲の代表作のひとつです。
この絵本では小学生でも読めるように平井呈一さんが書き改めた文がついています。
絵は伊勢英子さん。(2000年に出た絵本なので、伊勢さんは漢字表記になっています)
物語はある寒い冬の夜から始まります。
二人の木こりがひどい吹雪にあい、小さな小屋に逃げ込みます。
そこに雪女が現れ、年老いた木こりは凍え殺されます。
もう一人の木こりは若かったので、命は助けられますが、
見たことは絶対公言しないことを約束させられます。
その翌年、若い木こりは道で若く美しい女と出会います。
木こりは女を家に連れて帰り、やがて二人は結婚します。
子供が10人も生まれ、これほどの仕合せはないと思っていた矢先、
木こりはつい女に昔見た雪女の話をしてしまいます。
もうおわかりでしょう。
この女はあの時の雪女だったのです。
約束を破った報いで女は家を出ていきます。
仕合せ過ぎて、ふいと曲がったその先に不幸が待ち受けている。
この怪談話は雪女が怖いのではなく、
そんな人生のありようが怖いことを教えています。
伊勢英子さんは雪女を凛とした美女として描いています。
|
参考になりました。 |
|
0人
|
|
|
おべんとうの定番は厚焼きたまご
|
投稿日:2023/07/23 |
「しりとりあそび」をしていて、いつも困ったのが
「る」で始まる言葉がまわってきた時。
「ルビー」しか思いつきませんでした。
最近は「ルッコラ」という野菜の名前も言えますが。
クレヨン画でとてもリアルな食べ物を描く加藤休ミさんが絵を描いた
『おべんとうのあいうえお』という絵本は、
子供たちが大好きな「お弁当」にまつわる言葉を
あいうえお順に並べたものです。
例えば「あ」であれば「厚焼きたまご」とか
「い」であれば「いなりずし」といったふうに。
では、「る」はどうかというと、
「おべんとうのおかずをつめる」の最後の「る」。
これって、アリ???
両開きのページの左側に「ひらがな」の文字とその書き順、
それとその「ひらがな」を使った言葉があって、
右側のページには加藤休ミさんのおいしい絵が載っています。
絵だけ見るのも楽しいし、
その絵についたささやかなコメントもいい。
先ほどの「いなりずし」では、
「関東では四角、関西では三角など、地域によって形が異なる」とあって、
このコメントを読んでみるだけでも楽しい、
おいしい絵本です。
|
参考になりました。 |
|
0人
|
|
|
今日はネタバレありますから
|
投稿日:2023/07/16 |
実はこの童話がどんなあらすじだったのか覚えていませんでした。
そこで見つけたのが、
絵本作家いもとようこさんが文と絵を書いた、
(もちろん原作はグリムとなっています)、
『こびとのくつや』という絵本。
いもとさんのとってもやさしい絵が印象的な一冊です。
貧しい靴屋を営むおじいさんとおばあさんには
最後の1足を作る皮しか残っていないというところから
物語は始まります。
二人が眠っているうちに、その皮はとても素敵な靴になっていて
高値で売れます。
そこでおじいさんたちは2足分の皮を仕入れると
また翌朝には2足の靴が出来ています。
それもまた売れて、皮をたくさん仕入れていきます。
朝にはまたまた靴が仕上がっています。
おじいさんたちは一体誰が靴を作っているのかと
夜中にこっそりのぞいてみると、
2人のこびとでした。
いもとさんが描くと、こびとたちはまるで天使のよう。
やさしいおじいさんとおばあさんは
こびとたちにかわいい服と靴をこしらえてあげました。
こびとたちはそのあといなくなりますが、
おじいさんたちは幸せに暮らした、というそんなお話でした。
そういうお話だったのか、
すっきりして、私も幸せに暮らしましたとな。
|
参考になりました。 |
|
0人
|
|
|
時間を無駄にしないで
|
投稿日:2023/07/09 |
カナダのイラストレーター、ジャック・ゴールドスティンさんの
絵本『せんそうがおわるまで、あと2分』は、
1914年に始まった第一次世界大戦での悲劇を描いた作品です。
物語は同じ日同じ町に生まれた2人の青年が主人公。
仲良しのジムとジュールですが、2人には決定的な違いがありました。
それはジムの方がジュールより2分だけ早く生まれたこと。
そのせいか、ジュールはいつもジムより2分遅れます。
カナダに住む2人でしたが、
戦争は彼らの国も巻き込んでいきます。
2人はヨーロッパの戦場へと駆り出されていきます。
戦争は長く続きます。
始まって1564日経っても終わりません。
絵本の中にこの数字はちゃんと書かれています。
けれど、とうとう長く続いた戦争も終わる時が来ます。
1918年11月11日午前11時をもって戦争をやめることが決まります。
しかし、2人の青年がいた戦場ではまだ戦いが続いていました。
戦争終結まであと2分という時、
ジムは撃たれて死んでしまいます。
もし、ジムがジュールより2分あとに生れていたら、
人生は変わっていたかもしれません。
ジムが亡くなって、ジュールの人生もとても寂しくなりました。
戦争を終わらせることは簡単ではないでしょう。
けれど、ジムのようなたった2分で起こる悲劇はなくさなければいけません。
始めたのも人間なら、
終わらせることも人間です。
時間を無駄にすることなく、一刻も早い平和を祈ります。
|
参考になりました。 |
|
0人
|
|
|
ママのお仕事、見つけられるかな
|
投稿日:2023/06/25 |
子供の時に読んだ、あれはグリム童話だったでしょうか、
「こびとのくつや」という童話がありました。
貧しい靴屋のおじいさんが眠っている間に
小人たちが素敵な靴を作ってくれるというお話。
大人になってからも
そんな小人が私にも現れないだろうかと思ったものです。
でも、「こびとのくつや」が書かれた時代から随分経って、
あの小人たちのように夜のあいだでも一生懸命働く人がたくさん出てきました。
ポリー・フェイバーさんが文を書いて、
ハリエット・ホブディさんが絵を描いた、
イギリスの絵本『よるのあいだに・・・』には
夜でも働いているたくさんの人が出てきます。
夜の間に事務所の掃除をする人、
警備員の人は夜でもしっかり見守っています。
警察官や緊急救命士の人には夜でも休めません。
スーパーの補充も夜の仕事、
パン屋さんはまだ暗いうちからおいしいパンを仕込みます。
この絵本は子どもたちと一緒に読んであげましょう。
子どもたちが眠っていても、働いているたくさんの人がいることを
教えてあげましょう。
この絵本は単に夜のお仕事の紹介だけではありません。
「わたし」のママは夜になったらでかけていきます。
ママのお仕事は、最後に明かされますが、
実はどのページにもママが働いているヒントが隠されています。
一度読んだあと、もう一度最初に戻って
ママのお仕事をさがしてみて下さい。
とってもうまく描かれていますよ。
|
参考になりました。 |
|
0人
|
|
|
70年代の絵のタッチを楽しむ
|
投稿日:2023/06/18 |
きっと私たち日本人の多くの人が、
意識しているかどうかはともかく、
詩人谷川俊太郎さんの言葉に接してきているような気がする。
詩集で、教科書で、新聞で、雑誌で、
そして絵本で。
谷川さんは60年代から現在に至るまで200冊以上の絵本に
携わってきました。
つまりは、とても多くの画家やイラストレーターの人たちと一緒になって
つくってきたことになります。
そんな谷川さんの活動を「絵本・百貨店」として展示するイベントがありました。
そのイベントを記念して復刊された絵本の一冊が
この『まるのおうさま』です。
絵を描いているのは、粟津潔さん。
もともとは1971年に「かがくのとも」の作品として生まれて、
その後2019年に絵本として刊行されています。
そして、2023年4月に復刊されました。
印象的なのは、粟津さんの独特な絵と色づかいです。
たくさんの「まる」が出てきますが、どれひとつ同じではない。
そんな絵が続きます。
粟津さんについては少し注釈が必要かもしれない。
粟津さんはグラフィックデザイナーで、2009年に亡くなっています。
最近の絵本で粟津さんのようなタッチの作品を見ることは少ないですから
案外面白い感覚かもしれません。
この絵本では谷川さんの文もいいけれど、
粟津さんの絵の迫力がまさっているかもしれません。
きっと谷川さんはそんな絵との競争も楽しんでいたのではないでしょうか。
|
参考になりました。 |
|
0人
|
|
|
「うんこ」じゃなくて「うんち」
|
投稿日:2023/06/11 |
子供たちは「うんこ」が大好き。
その証拠に、あの「うんこドリル」が大ヒットしていうじゃないですか。
でも、それって、あの渦をまいた形状に秘密があるのかな。
もし、ネズミの「うんち」のように豆粒状のものだったらどうだろう。
あ、いま「うんち」って書きました。
「うんこ」はかわいいけれど、「うんち」はなんだかそうじゃない?
絵本『だれのうんちがせかいいち?』はフランスの絵本。
フランスの子供たちも「うんち」が好きなのかな?
文を書いたのは、マリー・パブレンコさん。
絵はカミーユ・ガロッシュさんが描いています。
森の中で動物たちが自分の「うんち」が世界一だと自慢? していくお話。
まずは、ネズミ。
その次は、リス。続いて、イタチ。・・・
どんどん動物たちは大きくなって、
オオカミやオジカまで「うんち」自慢が続きます。
この絵本は楽しいのは、
おしまいに人間の猟師が現れて、動物たちを撃とうとします。
ところが、危機一髪の動物たちを助けるのは
彼らの「うんち」。
さあ、どうなるでしょう。
「うんこ」はかわいいけれど、「うんち」もなかなかやるもんです。
|
参考になりました。 |
|
0人
|
|
|
いそがなくてもいい、ゆっくりと絵本を読もう
|
投稿日:2023/06/04 |
谷川俊太郎さんが文を書いたこの『とき』という絵本を読むと、
屋久島の杉はもしかしたら
この絵本の最初にある「おおむかしの もっと むかし」あたりに
芽ぶいたものかもしれないと思ったりします。
私たちはもちろんそんな時代のことは知らないけれど、
屋久杉はずっと見てきたのでしょう。
「むかし」も「おとうさんの こどものころ」も、
「おととし おばあちゃんが なくなった」ときも、ずっと。
この絵本だって、そうです。
最初に生まれたのは1973年。半世紀も前になります。
そして、今年(2023年)4月には第7刷として、また新しくなりました。
誰にも等しくある「時(とき)」。
大切なのは、それを大切に使うかどうか。
時間をかけて大きくなった屋久杉は堅牢で確かな命となって
島の暮らしを支えてきたそうです。
|
参考になりました。 |
|
0人
|
|
|
全606件中 91 〜 100件目 | 最初のページ 前の10件 8 9 10 11 12 ... 次の10件 最後のページ |