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ポテト・スープが大好きな猫

ポテト・スープが大好きな猫

  • 絵本
作: テリー・ファリッシュ
絵: バリー・ルート
訳: 村上 春樹
出版社: 講談社 講談社の特集ページがあります!

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作品情報

発行日: 2005年11月
ISBN: 9784062131957

みどころ

 根っからのテキサスっ子のおじいさんと、おじいさんが作るポテト・スープが好きでねずみ一匹つかまえたことのない猫のおはなし。
 二人は普段、お互いそんな素振りは見せないけど結構うまくやっているのです。猫はおじいさんの用意してくれた電気毛布の上でうたた寝するのが気に入ってるし、魚釣りに一緒に行くけど魚一匹捕ろうとしない猫のそんなところもおじいさんは結構気に入っている。だけどある日、おじいさんがいつもの様に釣りに出掛けようとしても一緒に来る気配のない猫を置いてひとりで出発します。釣りはうまくいかずしっくりこないおじいさんが家に帰ってみると猫がいない・・・。
 ゆったりとした日々を送る猫とおじいさんの絶妙な佇まいが猫好きの人にはたまらないのではないでしょうか。そうでなくても、猫が遠吠えの様な声で必死に語り、おじいさんが一生懸命聞いてその内容の一部始終を理解してしまう場面などはあまりに愛しい猫のその様子に感動してしまい、自分でも理解出来るような気になってしまうのです。
 村上春樹さんが本屋で見つけて買って帰り、読んでそのまま翻訳を決めたというエピソードも話題の心温まる絵本です。

(磯崎園子  絵本ナビ編集長)

出版社からの紹介

村上春樹が選んだ魅力的な猫の絵本!
この冬、あなたの心を暖めるために。あなたの大好きな人へ贈るために。

この『ポテト・スープが大好きな猫』は、僕がある日アメリカの街を散歩していて、偶然みつけた絵本です。ぱらぱらとページをめくり、「うん、これはいいや」と思って買って帰り、机に向かってそのまま翻訳してしまいました。この本は、年取った雌猫好きの読者のみなさんには、きっと喜んでいただけるのではないでしょうか。――<あとがきより>

ベストレビュー

おじいさんと猫の絆

 おじいさんと猫は、ひとつ屋根の下で暮らしています。お互い大切な存在であることがわかっていても、気持ちをあからさまにすることはありませんでした。ねずみ1匹つかまえたことがない猫の好物は、おじいさんの作るポテト・スープ。あたたかいスープを食するひとときが、おじいさんと猫の心のよりどころでした。そんなある日、日課の魚釣りに猫がついて来ようとしませんでした。「猫がいなくてどうだっていうんだ? ただのやせっぽちの猫じゃないか」――。おじいさんは、そのままひとりで湖に出かけました。
 湖の一件を通して、いつもいっしょだった関係から片方がいなくなることで、おじいさんも猫も相手の存在を大きく実感することになります。この時間は読者にとってもつらいところ。無言で互いを心配し合う姿がじんと胸に迫り、いっしょでなければ淋しいという現実を思い知らされます。この箇所、無言のいたわりは言葉で伝えるより何倍もの温もりを持ち合わせることをしみじみと示してくれ、思わずほろり。
 どちらかといえば物語の展開を味わうというよりも、絵本の中に流れる空気と時間に浸る作品です。おじいさんと猫の会話、しぐさ、表情ひとつひとつにお互いへの信頼が表れ、同時にひとり暮らしの気ままさとさみしさも描かれます。
 ひとり暮らしのおじいちゃんやおばあちゃんのいる小学生向けの絵本でしょうか。わたしは思わず自分の晩年を思い描きました。ちょうどテキサスの農場(ランチ)でひとり暮らしをしているおじさんがいるので、息子はイメージしやすかったんじゃないかな。というのは主人がテキサス州ダラス出身で、うちは親戚一同みな、主人公のおじいさんが暮らしているであろうダラス、フォートワース周辺に住んでいるのです。原書だともっとテキサスの田舎色が出るのですが、たとえば京都弁や東北弁をどういう英語にすればいいのかということと同様に、南部英語をどんな日本語にすればいいのかという難題は永遠に解決されません。翻訳では不可能です。なので静かであたたかい村上色たっぷりの語りで読めることは、作品の本質が十分に伝えられているだけに非常に恵まれたことじゃないかと思いました。テキサスの冬の陽が感じられるイラストも味わい深いです。
 ところであとがきに記されているおじいさんの帽子はMLBテキサス・レンジャーズのものではなく、NFLダラス・カウボーイズの帽子です。テキサス騎馬警備隊(テキサス・レンジャーズ)のシンボルがローンスター(ひとつ星)なので、ややこしくなるのですね。
(ムースさん 40代・ママ 男の子12歳、女の子6歳)

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